孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

Ⅴシネマ・アニキの時代

「アニキの時代」谷岡雅樹著を読む。著者はⅤシネマ草創期から、ビデオ屋とし関わり、評論も書く、そのⅤシネマへの思いは、半端なものではない。これほどⅤシネを熱く語る者がいるだろうか。Ⅴシネマは、東映のプログラムピクチャーが衰退し、劇場を主体とせずに、低予算で、制作する目的で、制作される。話は、単純で、バイオレンス、エロ、と主に独身男性をターゲットにした作品ばかり。かつて、劇場で、高倉健になりっ来ていた人が多かった。だが、このⅤシネマも、どこかその名残がある。哀川翔竹内力、小沢仁志、清水健太郎、といった強烈な面々が、Ⅴシネマで育ち、素晴らしい役者になった。著者が、哀川翔に肩入れするのは、同世代として、どこか感受性が、合うのではないだろうか。哀川翔ほど、「アニキ」と呼ばれるのに相応しい役者は、芸能界広し、といえどもいない。気取った所がなく、自然体なところが、誰からも愛される所以である。長渕剛の一連のドラマからは、ここまで味のある存在感のある役者に成長するとは、思わなかった。個人的には、黒沢清とタッグを組んだ、「復讐シリーズ」が好きだ。小沢仁志は、顔が怖いけれどやさしい人といのが、売りであるが、苦労人である。「ビーバップハイスク」の脇役から、芽が出ず、様々な試行錯誤の上に今の地位があるといっても良い。著者は、初期の頃のイベントの模様を次のように記している。「それらは、新種の怪しげな業界に一発勝負で乗り込んできた人々が、これまでの所属した世界で持て余していたエネルギーを賭けようとする、若さと、山っ気たっぷりの、まさにⅤシネマ的様相を呈していた」と。Ⅴシネマは、アナーキーで、芸能界で不始末をやらかしてしまった者をやさしく受け入れる土壌がある。かつて、のぞきで逮捕された、田代まさしが、監督を務めたように。ただ残念なことに、最近のⅤシネマは、「やくざごっこ」の域を超えない、質の低い作品ばかりになった。今一度原点回帰してもらいたい。私的には、「小島よしお」を主演にすれば、Ⅴシネマに新たな旋風を巻き起こすと思う。