孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

角川春樹・我が闘争

私は、角川春樹が、好きだ。この人に対しては、毀誉褒貶あるが、一貫した所があり、ぶれない。「我が闘争」ハルキ文庫は、そんな角川春樹の魅力を感じさてくれる1冊である。1993年8月28日に麻薬及び向精神薬取締法違反で、千葉県警に逮捕されてから、2004年4月8日に釈放されるまで、11年もの月日が費やされている。芸能人が覚醒剤で逮捕されるとは良くあるが、その大半が、軽い刑で済んでいる。反省の態度を見せて、罪を軽くしてもらう者が、大半である。仮釈放をもらいたいのだろう。高知東生のように、薬物依存の啓発活動に勤しむのは、いかがなものかと思う。薬を使用することは、絶対いけないことであるが、芸能人の行動とは、思えない。芸能人は、どこか、反社会的な所がなければいけない。その点、角川春樹は、本物のアウトローではないだろうか。福田和也氏に対して、刑務所の運動会の模様を楽しく語り、「更生なんかしてたまるか、俺は俺だ」と言い切る自信。自分は、「スサノオという神である」という発言は、精神医学的に何らかの病名が付けられかねない程に際どい。けれども、角川春樹が、主張すれば、何の違和感もない。むしろ、日々、自信を持てずに生きている私のような人間に勇気を与えてくれる。活字と映像、音楽というメディア・ミックスの角川商法は、一般的に批判されやすい。映画評論家など、角川映画など歯牙にもかけない。ただ、若くして、そういった手法を生み出したのは、もっと評価されても良いと思う。角川春樹の俳句は、上手下手の域を超えている。その人自身の生きてきた凄みのようなものが、俳句に投影されていて、味わい深い。「敗れざる者歳月に火を焚けり」、「おだやかに職なき春を迎えけり」。普通の人では、絶対このような句をで作ることができないだろ。角川書店の創業者である父、角川願義氏との相克は、凄まじい。しかし、後年、その父へのわだかまりが、解消していくエピソードが、紹介されている。「徹夜の撮影現場からホテルに戻ったときである。洗面所で髭を剃ろうとして、鏡をのぞきこんだときに、そこにまぎれもない父の貌があった。まるで双子のように瓜二つであった」と。単なるエディプスコンプレックな物語に収斂できない、深みがある。大胆で繊細という相反する面を持った、角川春樹に惹かれてやまない。