孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

周防正行監督の挑戦

「shall weダンス?」「シコふんじゃった。」で有名な周防正行監督が、新たな分野で活躍されている。「それでもボクはやっていない」という痴漢冤罪をテーマにした映画を撮って以来、刑事司法に関心を持たれた。最近では、大崎事件を支援されている。ただの売名行為ではない。第4次再審請求において、新証拠となる、被害者らが、殺害された場所の実証見分をも撮影している。自分の利益にもならないのに、ここまで出来るだろうか。「それでもボクは、会議で闘う」岩波書店は、氏の刑事司法に賭ける情熱が、伝わってくる名著である。2011年に、法制審議会の委員に選ばれた。法務省の手の内は、はあまりにも見え透いている。「郵便不正事件」で、村木厚子さんが、検察の証拠改竄によって、冤罪の汚名を着せられ、社会問題にまで発展した。世論の風当たりを避けるための名目として、周防正行監督と村木厚子さんを委員にしたとしか考えられない。しかし、周防正行監督の本気度には、圧倒させられる。刑事司法の専門家と対等に、渡り合えるぐらい、勉強されているのである。氏が、こだわるのは、「取り調べの録音・録画」、「証拠開示」、「人質司法と勾留の実態」である。とりわけ、「取り調べの録音・録画」については、激しく専門家と応酬を交わす。裁判員制度を対象とした裁判に限定するのではなく、全ての裁判に適用するべきだと強調する。また、一部ではなく、取り調べの全過程を録音・録画する必要性を説く。この問題は、冤罪を生み出してきた虚偽の自白を防止する最善策である。しかし、慎重に法改正しなければ、警察側の都合の良いように利用されてしまうことは、必然であった。周防正行さんが、懸念していたことが、すでに起こってしまった。今市事件では、別件で逮捕しておきながら、その過程を録音・録画しておらず、自白した後の被告人の弁明を録音・録画するという卑怯な手口を使っている。取り調べの全面可視化は、実現されない限り冤罪は、根絶しないだろう。「かつての大阪府警の取調室は、無法地帯」と言った弁護士の言葉は、その実態をうまく言い表している。メディアは、周防正行監督の活動をもっと評価するべきだと思う。いつからメディアは、刑事司法に無関心になったのだろうか。冤罪の背後に存在する警察権力が、恐ろしいだけではないのか。周防正行監督は、次のように言われている。「私は、映画監督として、今まで様々な世界を取材してきましたが、絶えず自分に言い聞かせてきたのは、初めの驚きを忘れるなということです。その世界を知り過ぎると、全てが当たり前になってきて、その世界を初めて見た時に感じた驚きや、面白さを忘れてしまう。しかし、その驚きや面白さこそが、映画を初めて見る観客にとっての最良の入り口になるのだと信じ、映画を作ってきました」と。今後の周防正行監督の活躍を期待するのみである。