孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

ボンクラ映画魂・三角マークの男優たち

「ボンクラ映画魂 三角マークの男優たち」杉作J太郎、洋泉社を読む。とにかく、マニアックで、中身の濃い本である。東映やくざ映画の悪役から始まって、時代激の斬られ役まで、カタログ的に紹介したものである。著者の杉作J太郎氏の、東映やくざ映画の思いは、とにかく熱い。杉作J太郎氏は、そのイメージと裏腹に非常に頭がよく、繊細な方だと思う。私立中学在学時に、街で、やくざに絡まれたことをきっかけに、男の教科書として、東映やくざ映画を見るようになったそうだ。私など、リアルタイムでその時代のことを知らないが、当時、やくざ映画を見終わったら、肩を怒らして、映画館から出てきたというエピソードをよく耳にする。観客が、酔いしれるぐらいに、映画に魅力があった証ではないだろうか。杉作J太郎氏が、憧れたのは、高倉健菅原文太などのスター俳優ではない。それよりも、主役に、撃たれ、斬られ死んでゆく、名も知らない役者さん達である。確かに、実録やくざ映画に出演している、役者さんの顔を見ていると、本職のやくざではないのかと思ってしまう。本書では、800人近い俳優の名前が挙げられている。今では、Wikipediaで調べられるが、これ程の人数の役者の顔と名前を覚えているのだから、すごい記憶力である。林彰太郎、岩尾正隆、汐路章、といった役者なら、顔だけ知っている人も多いだろう。ただ、彼らの持つ人間味のようなものは、コアなマニアでなければ理解出来ないと思う。東映は、スターを筆頭に、序列の厳しい会社である。誰もが、スターになることを夢見て、芸能界に入ったのに、端役に甘んじなければならい苦悩は、相当のものだ。そうした、状況で、偶然、売れっ子になったのが、川谷拓三である。仁義なき戦いで、ポスターに名前が載り、その後、一般のテレビドラマにも出演するようになる。しかし、若くして亡くなる。個人的には、仁義なき戦いの頃よりも、晩年の川谷拓三が好きである。苦労人だけあって、温かみのある演技には、胸を打たれた。今の芸能界に、川谷拓三のような、人間くさい役者がいるだろうか。セリフは、棒読み。たとえ演技が上手であっても、人を見下した感じがしてならない。杉作J太郎は、軽いノリで語るように見せかけて、本格的な映画論に達している。