孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

山口組取材50年 やくざに刺されても、書き続けた溝口敦さんの作家魂

山口組を中心に、暴力団を取材し続けてきた作家の溝口敦さんが、「喰うか喰われるか 私の山口組体験」講談社、を上梓し、ベストセラーになっている。これまで、数多くのやくざ関連の本を書かれてこられたが、この本はその集大成的な意味合いを持ち、貴重な書である。これまで、危険な目に遭遇してきた。1990年には、山組組の5代目襲名のルポを出版した際に、山口組幹部から圧力をかけられる。しかし、断固として拒否したために、約2カ月後、襲撃を受ける。傷口の幅は、5㎝。深さは、10㎝。この襲撃の時には、溝口敦さんは、「男を追いかけ、間合いを詰めてタックルすれば、倒せると思った」と述壊されている。次に、2006年には、子供さんが、山口組の男2人らに、刃物で刺され重傷を負う。これほど、恐ろしい思いをしても、飄々と語ることができるのは、覚悟を決めた、作家魂のなせる業である。日本人は、昔から、仁侠の徒に憧れる風潮があり、「やくざ映画」が大衆に支持されてきた。「やくざ映画」は、衰退したが、実話系の週刊誌で、常に、暴力団組織の情報が記事になっている。「アサヒ芸能」「週刊大衆」「週刊実話」などその最たるものである。山口組が、分裂し、神戸山口組山口組本家、絆會の3つの組に分かれた。警察は、山口組の抗争が激化するように、誇張しているが、事実は違うと思う。やくざと言えども、お金が、物を言う社会である。強力な資金源を保持している、本家山口組を実質的に支配している、弘道会の力には、どの組織を及ばないだろう。実話系のライターは、そうした勢力図と、やくざを持ち上げる記事しか書かない。必然と、やくざと交流を持ち、自分もやくざの一員になったと勘違いしている人が多い。溝口敦さんが、評価されるべきなのは、常にやくざと距離を置いて、取材してきたこと。そして、一般市民とかけ離れた社会の中で生きている、やくざのなかに、人間の普遍性を見出そうとしてきたこと。こうした、ヒューマンインタレストを持った作家が、少なくなってきた。やくざに関心がない人も、溝口敦さんの「喰うか喰われるか 私の山口組体験」は、一読の価値があるに違いないだろう。