孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

医学部に入学した息子が心の病気に 父親の苦悩を受け止める 優しさと誠実さに溢れたアドバイス 精神科医熊木徹夫の人生相談

産経新聞に、熊木徹夫の人生相談というコーナーがある。この人生相談、他の人生相談とかなり違っていて、読み応えがある。熊木徹夫さんは精神科医で、著作を読んでわかる通り、非常に頭の切れる方である。最近の相談で印象に残ったのは、次のようなものである。60歳代の開業医。30歳代の息子が2人います。共に、医学部に進学しました。長男は、普通に卒業して、医者になりました。次男は、大学4年生の時に精神疾患を発症し、留年と休学を繰り返したが、結局大学6年生で放校処分になりました。今も私ロ一緒に暮らしています。病院で診察を受けましたが、改善はなく、作業所に通っている他は、終日家にひきこもっています。親の死後、生活に困らないように、資産は、十分用意して、障害者認定を受けて、年金の受給を始めた。しかし、親としては、次男が人生で、最も輝かしい時期を病気で奪われ、本来なら仕事、恋愛、家庭と活気にあふれた日々を経験することなく、このまま一生を終えるのかと思うと、どうにも心の重荷が取れません。助言いただけませんか。といった内容。それに対して、熊木徹夫氏は、「人間万事塞翁が馬」という故事成語を引用して、幸せか不幸せかは、後にならないと分からないと、相談者の価値観を相対化しようとする。人生の意味を考えるとき、近視眼的に見るのではなく、長期のスパンで考えることも必要。あなたは、すでに、子に対して為せることは、果たしているし、次男さんも父の期待に応えようと懸命に努力した。にもかかわらず、お互いが無念をかみしめるだけでは、あまりにも不幸ではないか。彼の人生は終わりではない。自身が本当の満足を得られるために、今後も彼が何かできることはあるはず。」と、相談者が置かれている状況を肯定し、勇気づける。そして、最後に次のように結んでいる、「これほど短い人生で、意味を追い求める必要さえないかもしれない。あなたと息子さんに、今後なにかしらの安寧が訪れることを祈ります」と。エリートだった息子が、心の病気になって、普通の人生を送ることができなくなった。おそらく、こうした悩みを抱えている親御さんは多いと思う。ありきたりな人生相談の回答であれば、安っぽい慰めや同情で済まして、後は福祉的な制度を紹介して終わるだろう。しかし、熊木徹夫さんは、宗教的に人生の意味にまで触れて、相談者と向きあおうとする。その姿勢には圧倒される。ただ、人生の軌道修正は、なかなか容易ではなく、エリートコースを歩んでいた息子の今後の人生を考えると、絶望的になって、現状を受け入れるには時間がかかると思う。