孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

「テロリズム」を一貫して主題にした映画監督工藤栄一 長渕剛とトラブったり、凄い才能の持ち主であるが評価されず不遇な扱いを受ける

安倍元首相が襲撃される映像が問題になっている。子供たちに刺激を与えるなど様々な倫理的問題で。こうした報道を見て思い出したのは、映画監督の工藤栄一である。おそらく、日本映画に精通している人でもあまり知らないだろう。しかし、一部のマニアックなファンからは、カルト的な人気がある。代表作は、「十三人の刺客」「大殺陣」「その後の仁義なき戦い」「横浜BJブルース」そしてテレビの「必殺シリーズ」である。「十三人の刺客」、「大殺陣」はいずれも、「テロ」を主題にした時代劇である。庶民を苦しめる暴君を暗殺するという主題で、身分の低い武士たちが結集して、武闘を繰り広げるという極めてラディカルなものである。東映時代劇は、勧善懲悪をモットーにした明朗なものであった。そんな状況にあって、工藤栄一監督は、反社会的な時代劇を撮る異端の映画監督であった。そのため東映からは冷遇されて、1970年代はほとんど映画を撮らせてもらえない。東映が、「やくざ映画」を量産している時代に、工藤栄一監督は、テレビの世界に乗り込むことになる。まず、「傷だらけの天使」を撮る。「傷だらけの天使」は、荻原健一と水谷豊が主役の青春ものである。そして、「必殺仕置人」を撮る。必殺シリーズの基礎を築いたのは、工藤栄一監督と言っても過言ではないだろう。仕置人が、暗殺者であり、中村主水のキャラクターを確立させたのは、工藤栄一監督の演出術にある。工藤栄一監督は、アクションシーンにこだわる。他の監督が、オーソドックスなアクションに終始するのに対して、工藤栄一監督は、「リアルさ」を常に追及し続けた。仕置人が、暗殺者であるならば、どのようにして悪人を仕置きするか徹底的に考え抜き、カメラを回した。工藤栄一監督の映画には、ほとばしる情念と人間存在へのやさしさがある。その辺が、一般の観客やプロデュ―サーには理解できないのだろう。長渕剛が主演をした「ウォタームーン」では、長渕剛の独善的な要求に嫌気がさして、撮影中にトラブルになった。途中からは、工藤栄一監督は、撮影を放棄して、実質的には、長渕剛がメガホンをとることになる。長渕剛工藤栄一は、どこか性格が似たところがあるのではないだろうか。後に、長渕剛がテレビで主役となる「とんぼ」。最終回、やくざ者に刺され、血まみれになるシーン。あれなど、工藤栄一監督が、すでに昔からやっていたことである。テロリズムを描けば、工藤栄一監督の右に出るものはないと思う。