孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

東京大学卒で高校の国語教師であった父親は何故 「家庭内暴力の息子」を殺害したのか? 理想的な家族に潜む病理はいつの時代でも変わらない

2019年に「ひきこもり」の息子を殺害した元農林水産省の官僚の事件が社会を震撼させた。父親の熊沢英昭被告は、東京大学を卒業してエリート官僚で、人柄も良く、人望も熱かった。息子は、私立の名門高校に進学するも、いじめに遭い、中退する。その後、絵に書いた「転落人生」を送るようになった。家庭内暴力が凄まじく、父親は、耐えかねていた。犯行直前に、川崎市で高齢のひきこもりが、無差別殺傷事件を起こしていたことと。殺害された息子が、小学校の運動会の声が騒がしいことに腹が立ち、「ぶっ殺す」と発言した。このことが契機で、息子も「川崎の通り魔」のような事件を起こすのではないかと思い、父親は、息子を殺害した。実は、同じような事件が、30年前にも起きている。1992年6月浦和市の高校の国語教師の父親が妻と共謀して、睡眠中に息子を殺害した。この息子は、成績優秀であったが、高校中退後、大検を合格して、私立大学に合格するが、中退する。しだいに、生活が乱れ、両親に激しい暴力を振るうようになった。両親は、耐えかねて、息子を殺害するに到った。浦和地裁では、懲役3年執行猶予5年というあまりにも軽い判決が下された。嘆願書が、8万以上も提出されたことが減刑につながったのだろう。この父親は、苦学して、東京大学に入学して、生徒からも慕われる申し分のない人間であった。また、息子も勉強だけでなく、スキー1級、音楽、絵画の才能もあり、決して、「ガリ勉タイプ」の優等生ではなかった。父親と母親は、息子の「家庭内暴力」を著名な精神科医に相談していた。しかし、悲劇を食い止めることができなかった。この息子は、厳密な意味で「ひきこもり」とは言い難い。しかし、「ひきこもり問題」がクローズアップされる前の1990年に、このような事件が起きていたことは、非常に未来を予兆させるものがある。傍目には、「理想の家庭」に映ったにもかかわらず、一体何が起きていたのか。私が思うに、東京大学を卒業して、分別もあり、周囲からも慕われていたからこそ、この事件は、起こるべくして起きたのではないだろうか。「自分の子供も、他人の子供と同じように、教育できる」という過信を、優れた教師ほど持ってしまう。この事が、悲劇を生んだ最大の原因ではないかと、私は思う。