「家、ついて行ってイイですか?」というテレ東の番組がある。私の両親が隣の部屋で真剣に見ているので、番組の存在だけは知っている。しかし一度たりとも見たことがなかった。しかし昨日は偶然見る機会があった。最後まで見ていないうえに、くだらない内容だったのでうろ覚えであるが、35歳の売れない芸人と38歳の弁護士を目指す女が結婚を反対されているという趣旨のものであった。女の父親が反対している。「芸人」という職業で反対しているのではく、この35歳の売れない芸人の芸風が気に入らないのである。番組スタッフは「格差婚」としてこのカップルを見做していた。しかしどこが「格差婚」なのだろうかと私は違和感を感じてしまった。女の方がすでに弁護士として華々しく活躍して、そのうえ「美人」であったならば、「格差婚」であろう。しかし実際は違って、野暮ったい女であった。「家、ついて行ってイイですか」は街で見かけた人間に番組スタッフが声を掛けて、承諾を得る事が出来れば、取材をする方針を取っているという。プロデューサーは柳田国男の「遠野物語」の現代版のような番組を制作したいと意気込んでいる。言わんとすることは分かるが、全く違う趣旨の番組になっていると私は思えてならない。偶然にしては、何もかもが出来過ぎて不自然である。NHKの人気番組である「ドキュメント72時間」と相通じる部分がある。関西の番組で意図的に「ステレオタイプの大阪のおばさん」を強調するVTRを見せるのと同じ構図である。はっきり言って、「テレビに出て来る大阪のおばさん」は恣意的に作られたものだ。確かに、そういうおばさんも存在するが、少数派である。「正統派の大阪人」は、もっと「品がある」。テレビ東京は忘れかけていく人情を誇張する番組が多い気がしてならない。ただそのどれもが、中途半端内容になっている。「家、ついて行ってイイですか」のような安っぽい感動モノが人気というのは視聴者にテレビを鑑賞する能力が低下してきた証である。