孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

辺見えみりの元旦那が演じた「麻雀覇道伝説 天牌外伝」は、近頃稀に見る、上質な映画

「麻雀覇道伝説 天牌外伝」という映画を見たが、最近の日本映画の中では、完成度の高い作品であった。「別冊漫画ゴラク」に連載された漫画の映像化であるが、麻雀の知識がなくても話が理解できる。出演者のほとんどが無名で、Ⅴシネマのような作品のため、一般受けするとは思えない。しかし、これほど人間臭い、昭和ノスタルジーに満ちた、ウエルドメイドな作品が、現在の日本映画にあるだろうか。松田賢二演じる、主人公の黒沢義明は、一晩で億の金を稼ぐ麻雀打ち。麻雀という勝負の世界に生きる男たちの熱いドラマが繰り広げられる。原作の漫画は、明らかに、阿佐田哲也の「麻雀放浪記」や雀鬼と呼ばれている、桜井章一の世界観に影響を受けているず。麻雀を人生の勝負に喩えるは、男のメルヘンで、今も古びない普遍性を持ったテーマだと思う。とにかくこの映画の黒沢義明は、痺れるぐらい、格好良い。おかまバーの主人が新宿で雀荘を開いている、佐々木という男に嫌がらせを受けている。彼を助けるために、一人で、佐々木の雀荘に乗り込み、麻雀で対決して、佐々木を打ち負かし、勝った金をおかまバーの主人の店に置いてやる。このおかまバーの主人を演じているのは、寅さんシリーズで、有名な笠智衆の孫の、笠兼三である。笠兼三の演技の上手さはには、関心させられた。「オネエ」を演じるのは、簡単なようで、非常に難しい。笠兼三は、紋切り型の「オネエ」ではなく、人生の酸いも甘いも噛み分けた、人間臭いキャラクターを好演している。これから、期待できる役者さんだ。麻雀の天才で、クールだが、熱い心を持った黒沢義明という設定は、ベタであるが、「麻雀覇道伝説 天牌外伝」は、人間ドラマに仕上がっている。いくら麻雀を打っても、勝てずにいた、どん底時代を忘れないために、黒沢義明は、ビンに土を入れて持ち歩いている。いつでも、土を口に入れて、噛みしめるために。いかんせん、この映画の弱点を挙げれば、女性が全く出てこない点だ。黒沢義明の妻なり、彼女がドラマに介入すれば、もっと違った展開になるはずだ。おそらく、シリーズ化して、今後そうしたエピソードも描かれると思うが。「麻雀覇道 天牌外伝」のようなⅤシネマ色の強い映画は、評論家からは、無視されてきた。Ⅴシネマは、「やくざ映画」で一段低いものと見做す差別意識があるからだ。大手映画会社の配給で、有名芸能人をキャステイングした映画が、くだらなくなった。社会の底辺で生きるアウトサイダーを描き続けてきた、Ⅴシネマに隠れた名作があることを知るべきだと思う。