秋山仁先生がNHKの「3ゕ月でマスターする数学」という番組に出演されているのを見て、懐かしい想いになった。かつて秋山仁先生は頻繁にテレビに出演して、超売れっ子であった。秋山仁先生は、自らを「落ちこぼれ」と自認されて、若者とくに受験生の良きアドバイスをされていた。秋山仁先生は数学以外の科目は全然出来なくて、劣等生であったと言う。確かに、秋山仁先生は東京大学を卒業していない。優秀な数学者の大半は東京大学の理学部の出身である。秋山人生は風貌もさることながら、ファッションも奇抜で、若者の支持を得た。予備校の教師時代は超売れっ子であった。納得のいく話である。数学嫌いの子供を作っているのは、学校教育にある。十年一日のごとく、同じ教え方で、生徒が興味が持てるものではない。数学マニアがある一定程度存在して、彼らは異常なほど数学のテストで結果を出し、凡人の生徒と住む世界が違う住人のようである。しかしそういう生徒が必ずしも数学者として成功するとは限らない。要するに数学を楽しむこと、何日でも同じ問題を考え続ける「忍耐力」が成功への道だと私は考えている。秋山仁先生は、ユニークな発想で数学を教えられる。対象はエリートではなく、数学の不得意な子も考慮している。その辺に秋山仁先生のやさしさがあるのではないだろうか。かつて森毅という方がおられた。京大の先生で、関西弁で飄々とお話しされた。森毅先生も秋山仁先生と似ていて、若者とくに受験生に向けて温かい眼差しで、数学の楽しさを説いた。森毅先生は典型的な「京大文化人」である。東京の文化に対する反発や批判精神。著作が多いが、今読み直しても全然古びない。「数学教育の原点」を模索された方である。晩年は不慮の事故で亡くなったのが惜しまれる。秋山仁先生は由美かおると噂になった。由美かおると言えば、水戸黄門のお銀役で、入浴シーンで有名な女優さんである。秋山仁先生に魅力があったのだろう。いずれにしても、秋山仁先生、森毅先生のような若者に限りなく愛情を込めて接する方がいなくなった。何もかもが、SNS上のやり取りで、素気ない。こういう人間味のある人が必要な時代だと私は思う。