孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

役者小峰隆司

小峰隆司氏が亡くなられた。知らない人が大半であろう。私のように子供の頃から時代劇に慣れ親しんできた者にとっては、大きい存在である。東映の大部屋俳優で、何時も端役で、せりふがあっても一言二言。しかしその強烈な面構えは一度見たら忘れられない。杉作J太郎氏の言葉を借りれば、昆虫のごとき面相という形容詞が、相応しい。ウイキペディアで調べれば分かるように、膨大な数の映画、テレビに出演されている。日本映画を陰で支えてきた、かけがえのない、役者さんである。華やかな芸能界は誰もが、主役を演じられるわけではない。そんな厳しい世界にあって、たとえどんな役柄でも全力で演じるということは、真似のできることではない。私のような器の人間だったら3日として続かないだろう。理不尽なことがまかり通る映画界で、60年も生きてこられたことは、その人徳があってのことだと思う。小峰隆司氏、そして先日亡くなられた福本清三氏以外にも東映には、個性豊かで、人間味のあるかつて数多くおられた。映画全盛期には、東映の大部屋俳優さんたちは、大活躍された。特に深作欣二監督の「仁義なき戦い」を嚆矢とする一連の実録やくざ映画は、画期的なものであった。誰が主役かわからないような深作流演出は、大部屋俳優の魂に火をつけたことであろう。川谷拓三が、スターの仲間入りしたのもそうした背景があってのことで、深作監督はもちろ工藤栄一中島貞夫といった大部屋の俳優であっても分け隔てなく関われる映画監督の才覚ではないだろうか。映画の技術は、発達したが、名もない役者に真摯に向き合う人間的なぬくもりを持った映画監督が、皆無に近いように思えてならない。