孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

映画が公開されて「モデル」の暴力団組長が殺された 「北陸代理戦争」 「その人を殺さんと男になれん」 70年代の「東映やくざ映画」に咲いた仇花である

「映画の奈落」という本を読んだ。この本は、1977年に東映で、公開された「北陸代理戦争」の脚本家である高田宏治のインタビューと映画公開後に起きたある暴力団組長の死の真相に迫った内容である。「北陸代理戦争」は、東映で大ヒットした「仁義なき戦い」が終わり、やくざ映画が終焉に近づいていた時期に制作されたので、一般的には知られていない。北陸の暴力団組長である川内弘がモデルになっている。川内弘は、山口組の「ボンノ」こと菅谷政雄の盃をもらう。しかし、川内弘は、次第に山口組内においても、影響力を持ち、「直系組長」の地位を密かに狙う。不愉快なのは、「ボンノ」こと菅谷政雄である。自分の子分が、親を差し置いて、「直系組長」になることは、「極道社会」では、「反逆」になる。映画そのものは、高田宏治が直接に川内弘から聞いた話をもとに、「脚色して」シナリオを描き上げた。川内弘は、映画の中では死なない。ただ、主人公が、映画の中で襲撃される「喫茶店」が、実際の事件の現場となったことが話題となったのである。川内弘は、親分に逆らって、自らが組長になった。その際に高田宏治に言った言葉が、「その人を殺さんと男になれん」というもので、映画の「セリフ」になった。やくざの話は、真偽定かでない部分が多い。「見栄を張り」、「あることない事を大袈裟に吹聴する」のがやくざである。高田宏治の「シナリオ」が秀逸なのは、「ひとつのエピソード」を膨らませて、「東映映画が持っている反社会性」にまで昇華させるところだ。特に高田宏治は、「女」を描くのが上手い。後に「極道の妻」で「名セリフの数々」を生み出した張本人でもある。1970年代東映という会社は、「警察」から睨まれていた。映画の売り上げが、「山口組」に流れているのではないかと、度々家宅捜査を受けたこともある。「北陸代理戦争」で、川内弘と高田宏治東映の社員たちを引き合わせたのが、元やくざであった「撮影現場の進行主任」の男である。この「進行主任」は、撮影時に「やくざ」が言いがかりを付けてくる際に、「トラブル」を解決する役割を果たしていた。いかに、1970年代前半の東映が、「修羅場」で映画を撮影していたかを物語る。「北陸代理戦争」のような、いわくつきであるが、「不良性感度の強い映画」を今日本で撮れる映画人は皆無だと思う。