無罪が確定した、西山美香さんの国家賠償請求訴訟を巡り、滋賀県警が、無罪判決を否定する内容の準備書面を提出した問題で、県警の滝沢依子本部長は、県議会本会議で、「書面の表現に不十分な点があり、西山さんをはじめ関係者の心情を害したことについて、県警を代表してお詫び申しあげる」と謝罪、訂正する方針を示した。2003年5月に、滋賀県の湖東記念病院で、入院患者が、心肺停止の状態で発見されて、死亡した。滋賀県警は、業務上過失致死の疑いで捜査していたが、どうしても、殺人事件として立件するために、筋書を描く。その生贄にされたのは、西山美香さんだ。西山さんは、知的な遅れがあり、人に迎合しやすい面があった。取り調べに当たった刑事が、その性格に付け込み、西山さんは、その警察官に好意を抱くようになる。その結果、「自分が呼吸器のチューブを外した」という虚偽の自白を引き出すことに成功する。他の、決定的な証拠もなく、この虚偽自白のみで、西山美香さんは、有罪となり、刑務所に服役する。出所後、再審請求を繰り返して、ようやく、2020年3月に、無罪が確定する。再審の裁判では、鑑定医が、「痰のつまり、つまり自然死もありうる」と警察官への報告書を隠蔽していた事実が、明るみになった。被告人の利益になる証拠を裁判所に提出しない検察の体質は、一向に改まることがない。何よりも許せないのは、知的な遅れのある人間から嘘の自白を引き出して、犯人に仕立て上げる警察の取り調べだ。西山美香さんを陥れた警察官は、辞めさせられるどころか、滋賀県内の署長にまで出世している。世間の常識が、警察の常識ではないことを教えてくれる、良い例ではないだろうか。再審無罪になって、国家賠償請求という民事裁判の場で、無罪になった被告人を、灰色無罪とみなすことは今に始まったことではない。誤った裁判の判決を下した裁判官が何の罪を受けずに、壇上で、「人を裁く」権利を剥奪されることがないのも不平等である。滋賀県警は、形式的な謝罪ではなく、西山美香さんを取り調べた、警察官を辞めさせるだけでなく、何らかの罪状で起訴するべきだ。