孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

無期懲役判決で「ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい」と叫んだ小島一朗の実像とは

2018年6月9日走行中の東海道新幹線「のぞみ265号」車内で、無差別殺傷事件が発生した。女性2人が、ナタで襲われ、止めに入った男性が殺害された。逮捕されたのは、小島一朗22歳だった。動機は、「刑務所に入りたかった」とされている。2019年12月18日横浜地裁小田原支部で、無期懲役の判決が言い渡された。すると、小島一朗は、「ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい」と腕を振り、大声で万歳三唱した。控訴せずに、刑が確定しい、刑務所に収容された。その小島一朗を取材した本が、「家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯 小島一朗の実像」インベカヲリ☆、角川書店で出版された。著者のインベさんは、写真家で300人以上の女性を撮影した異色の経歴を持つ。2019年から面会を始め、13回の接見を重ねながら、小島一朗の素顔に迫っていく。小島一朗の母親は、ホームレスや受刑者の支援を行い、「マザーテレサ」と呼ばれていた。しかし、3歳からは、祖母の家に預けられることになる。祖母からは、ひどい扱いを受ける。インベカヲリさんは、不幸な成育歴が、小島一朗の人格形成に大きく影響したと解釈している。小島一朗は、「刑務所に、安全な居場所、家庭」を重ねていたという。警察官から職務質問された際に、「ホームレス自立支援法第十一条」を持ち出し、警察官から「意地になってるのか」と聞かれれば、「それは、フロイト防衛機制でいうところの投影というやつだよ」と返す。あるいは、著者であるインベカヲリさんに要求する、差し入れは、「枕草子」、「今昔物語集」、カントの「純粋理性批判」やヘーゲルの「小倫理学」などの本であったり、裁判では、法的知識をひけらかす。これらのエピソードからすると、著者の解釈は違うと思う。不幸な成育歴が、少なからず人格形成に影響を与えることもあるが、小島一朗は、アスペルガーあるいはそれに類似する精神疾患に罹患していたのではないだろうか。人間に対する好奇心が強い著者であるが、今一つ犯罪事件に対する知識が浅いような気がする。犯罪心理学という分野があるように、こうした事件を取材する時には、前もって知識を下調べしておくべきである。また、取材者に、本心を見せるとは限らない場合もある。ただ一つの救いは、著者のインベカヲリ☆さんは、小島一朗を鬼畜と見做していないことだ。たとえ世間を騒がした事件の犯罪者であっても、ひとりの人間であることを忘れてはいけないと思う。