2019年1月に、松山市内の路上で男女4人が、タクシーから降りた際に、現金5万5千円入りの運転手のバッグが盗まれた。車内のドライブレコーダーに、助手席の女がバックを持ち去る様子が映っていた。愛媛県警は、このドライブレコーダーの映像をもとに、捜査を開始して、約半年後に、近くのアパートに住む女子大生を逮捕する。しかし、女子大生は、任意の事情聴取の段階から一貫して否認する。その後、同じアパートに住む別の女が、「映像に映っているのは、自分です。」と自白して、女子大生逮捕は、誤認逮捕であったことが判明する。取り調べでは、暴力はなかったものの、罵詈雑言が酷い。「犯人なら目の前にいるけど、やっていないことを説明できないよね」「タクシーに乗った記憶ないの?二重人格?」「就職決めってるよね」など女子大生にとっては耐え難い取り調べだっただろう。人格を否定し、精神的に追いつめて、自白を強要するような取り調べがいまだになされていることを物語っている。この事件ドライブレコーダの映像から、犯人を割り出すまでに半年近くも費やしている。女子大生が住む同じアパートの住人が本来の犯人であったわけであるが。指紋を採取するなり、確実に裏づける証拠をもって、犯人逮捕に踏み切るべきだったのではないだろうか。また、ドライブレコーダや防犯カメラの映像を過信することは非常に危険であることをこの事件は示唆している。防犯カメラの映像といっても、科学的に完全に万能であるはずではなく、時には不鮮明な映像しか映っていないこともある。科学捜査を掲げていても、警察は、大きな過ちを犯すことを自覚するべきだ。誤認逮捕された女子大生は、手記で次のように心境を綴っている、「5月27日から誤認逮捕だと分かった7月19日という期間は、私にとっても長く、不安、恐怖、怒り、屈辱といった感情が常に襲い、ぴったりと当てはまる言葉が見つからないほど耐え難いものでした。手錠をかけられたときのショックは忘れることができず、今でもつらいです」ひとりの女子大生をこれほど恐怖に晒したにもかかわらず、取り調べた警察官の名前が公表されていない。本部長が謝罪して終わり。警察は、何の罪科もない一般市民の人権を蹂躙しても、罪の意識すらない。こうした誤認逮捕、冤罪事件を生み出さないためにも、取り調べにおいての、全面可視化および弁護士立ち合いが求められる。