孤独死予備軍ひきこもり日記

ひきこもりが、日々の雑感を綴ります。

名張毒ぶどう酒事件 奥西勝死刑囚は「雪冤」を果たせずに獄死 90歳を過ぎた妹は「死後再審」を求め兄の「無実」を信じている 警察と村人によって「でっちあげられた」巧妙な冤罪事件 

袴田事件」の再審開始決定が決まったが、いまだ「再審請求」を求めて争っている事件が日本には数多く存在する。

袴田事件」の今回の報道に対して、私は違和感を感じてならない。90歳の姉の袴田秀子さんが、被告とされた弟の袴田巌さんを支え続けたという美談を強調した「情緒的」な報道がなされた。

そもそも、「袴田事件」が発生当時、静岡県警の「リーク」を垂れ流し、袴田巌さんを絶対犯人視した報道をしたのは、メディアそのものだ。

自分たちの報道の過ちを顧みず、「世論」が追い風になれば、都合良く、「独善的な正義面」した報道する。そのメディアの罪は重いと私は感じてならない。

今回紹介するのは、昨年10回目の「再審請求」が、名古屋高裁で棄却された「名張毒ぶどう酒事件」である。

昭和36年3月28日の夜、三重県名張市葛尾の公民館で開かれた生活改善クラブ「三奈の会」の総会後の懇親会において、ぶどう酒を飲んだ女性のうち5人が死亡、12人が入院した。飲み残りのぶどう酒から、農薬の成分であるTEPPが検出され、毒物混入事件として、警察は捜査を開始した。そして、ぶどう酒を公民館まで運んだ奥西勝氏が取調べられ、連日連夜の取り調べの結果、犯行を自白して、4月3日に逮捕された。第1審では、奥西勝氏に無罪判決が言い渡された。しかし、控訴審において、逆転有罪となり、以後長い裁判が繰りかえされることになる。2015年に奥西勝氏は、八王子医療刑務所で死亡する。そして妹の岡美代子さんが「死後再審」の請求人となって、現在も係争中である。名張毒ぶどう酒事件は、警察が、犯行ストーリをでっち上げ、村人たちの証言も、警察のストーリーに合わすがごとく、見事に変遷していった。閉鎖的な村において、お互い誰が犯人である疑心暗義になっていた。その村人の心情に付け込んだのが、警察である。奥西勝氏は、妻以外の女と不倫関係を持っていた。妻に、不倫を責められたので、公民館に村人が集まる機会を利用して、妻と相手の女性を「毒殺」しようとしたというのが警察の「犯行ストーリ―」である。確かに奥西勝氏は、不倫をしていたが、切羽詰まったものではなく、この土地は、奥西勝氏以外も不倫をする男が少なからずいた。つまり、この土地柄は、昔から「男女関係に奔放」であったいうことだ。確定判決の決め手となった「奥西勝氏以外に毒物混入の機会がない」。これについては、ぶどう酒が会長宅に運ばれたのは、「午後5時前後」で、その直後に、ぶどう酒が公民館に運ばれている。よって、ぶどう酒に毒物を混入することができたのは、約10分間、公民館にいた奥西勝氏以外いないという事実認定。しかし、これを検討すると、ぶどう酒が、会長宅に運ばれた時間について、村人たちは、当初「午後4時前」と供述していた。急に「午後5時前後」と変遷してしまう。奥西勝氏を犯人に仕立てあげる警察の誘導に村人たちは乗せられたと言っても良いだろう。次に、犯行に使用した毒物は、ニッカリンTとされた。しかし、弁護団が「再審請求」で提出した新証拠の結果、犯行に使用された毒物は、ニッカリンTではない可能性が高いと判明した。また、ぶどう酒瓶の「二重王冠の内冠の表面の傷痕が、奥西勝氏の「歯痕」であるという鑑定結果にも疑義が生じたことだ。犯行に使用した「毒物」も異なり、奥西勝氏が歯で「ぶどう酒」の瓶を開けたという「警察の犯行ストーリー」を弾劾できるものであるにもかかわらず、裁判所は、「再審開始」を認めようとしない。「名張毒ぶどう酒事件」の再審請求審においては、「人権派」の裁判官でさえ、棄却している。「死後再審」を求めて、再審請求人となった奥西勝死刑囚の妹の岡美代子さんは、90歳を過ぎても、いまだ兄の無実を信じている。「兄は、絶対にやってませんので、無実を信じています。どうぞ、助けてください」と語る。警察の手によって、犯人に仕立て上げられ、死後も90歳を過ぎた妹が兄の無実を訴える。冤罪ほど、理不尽で、人間への「冒瀆」はない。